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お菓子の家を作るならブラインドカーテンの紐は絶対ひもQにしたい男 アメイジングRYOです。
お風呂の蓋はスーパーBIGチョコとかがいいな。
ポップと残酷のマリアージュは本編譲りな『ガヴ』劇場版を語っていきましょう!
ストマック家を推せ!!
あらすじ
逃げた犬を探す依頼を無事完遂し事務所への帰路についていたショウマと幸果は偶然白い服の傷だらけの男に出会う。
男から流れ出るのは青い血液かも分からぬ液体。そして男を追って現れたグラニュートとも違う異形の怪人にショウマは仮面ライダーガヴに変身して戦いを挑む。
怪人を倒すことには成功したが、男は消滅してしまい更にその男の持っていた黒いデバイスが起動したかと思うと扉が現れショウマは扉の向こうに吸い込まれてしまった。
ショウマが辿り着いたのは元いた世界にそっくりだが闇菓子が存在せず、人とグラニュートが手を取り生きている皆が幸せな不思議な異世界。
そこでショウマは自分によく似た青年 タオリンに出会う。ショウマと同じように幸果に拾われたが記憶がないというタオリンの腹には白いガヴがあり…
一方、この幸せな世界にもまた異世界の脅威が迫っていた。
タオリンの正体とは果たして。そしてショウマはこの世界を脅威より救うことは出来るのか…
『ガヴ』らしさ満載!ポップでダークな番外編

まず本作は去年の『ザ・フューチャー・デイブレイク』のようにTV本編と密接にリンクしていたり、TV本編で明かされない情報が出て来て結果本筋に強く結びついているようなタイプの映画ではないことは最初に書いておきたい。
作りとしては完全に番外編。平成前期によく見られた本編とは完全に切り離された世界を舞台に展開される、単品として完結しているタイプの映画に近いね。
冒頭ショウマがいきなり謎の男の持つデバイスで扉の間を通って異世界に飛んでしまうところから話が始まるのでそれ以降はショウマはそちらで活動することになり、元いた世界では幸果、絆斗、ラキアがショウマを異世界から連れ戻そうと調査を開始するといった2つの世界の2軸でストーリーが紡がれていく構成になっている。
ショウマが飛んだ世界は闇菓子が存在せず人間とグラニュートのどちらの種族も互いを尊重している幸せな世界。色とりどりの風船が浮かび、シャボン玉が飛び交い、街全体がポップでジャンボリーな雰囲気で「幸せな世界」をこれでもかと表現している。
この世界には闇菓子がないからストマックは普通のお菓子屋さんとして家族仲良く会社を経営し、闇菓子がないから絆斗は荒れる事もなく配達員として働き家には母が待っていて、闇菓子がないからラキアはストマックの執事として働いてるし家でコメルも待っているし、闇菓子がないから井上みちるももちろん…
本編における闇菓子がいかに登場人物達の全てを翻弄し狂わせていたかが分かる。もうこの時点で「(本編は)何故こうならなかったんだ…」と悲しくなってくる。
物語中盤では煌びやかなお菓子の家も出て来たりとお菓子がテーマのポップな仮面ライダーという『ガヴ』らしさは劇場版であっても健在だ。
しかし!無論、そっちが健在ならばもう一つの『ガヴ』らしさも健在。
ポップな外観に反して『アマゾンズ』に勝るとも劣らぬ強烈ダークな展開も満載しているのが本作の魅力。
まずこの異世界はショウマが元いた世界にいた人々が境遇や立場は違えど存在する。そして登場する人々は皆幸せになっている。
そんな中ショウマはこの世界のもう1人の幸せになったショウマに出会うことはない。
それは何故か。
理由は明白で「闇菓子がないから」だ。
闇菓子がないからみちるは攫われることはなく、ブーシュに見初められることもない。
闇菓子を憎み撲滅する事を唯一最大の目的にするショウマはその実闇菓子と強く結びついた存在であり、嫌な書き方をするなら闇菓子がないような幸せな世界にショウマの居場所はない(生まれ得ない)とこの映画は言っている。
「(みんな幸せで、俺だけがいない世界…)」という劇中のショウマのモノローグに思わずため息…。
この映画のダーク成分を語る上でゲストキャラクターであり本作の準主役であるタオリンの存在を書かずにはいられない。
記憶がなく幸果に拾われはぴぱれでバイトしているという境遇から彼が本編世界でいうショウマのポジションに該当することは(前述通りもう1人のショウマが登場しないのもあって)かなり分かりやすく描かれている。
演じたのはFANTASTICSの中島颯太さん。劇中では見事にジェネリックショウマであるタオリンを演じ切っていて見た目だけじゃなく演技でどんどんタオリンってショウマに似てるなって思わせてくれた。
てか今回FANTASTICSから4人参加してるけど演技の面では誰1人違和感無いどころか全員お上手でビビる。
このタオリン、やはりというべきか今回の敵であるミューターに関わりのある人物なのだがこの背景は本っっっ当に真っ黒ダークで光が見えない。
本編のショウマも辛い境遇だがタオリンもそれに負けてないレベルで、その辺が明かされる後半の展開はいろんな面でそれこそ『アマゾンズ』を思い出す残酷っぷり。ゲストキャラであんな目に遭うキャラってあんまりいないよ…?
今作はタオリンというジェネリックショウマを出すことでショウマというキャラクターの核を描いていたようにも思う。
彼が存在する意味、彼がどういう人で何を思い行動するのか。ショウマの魅力とはなんなのか。もう1人の自分という合わせ鏡のような存在を持って主人公を深掘りするという手法を使っているという意味では『ザ・フューチャー・デイブレイク』に似ているとも言えるかもしれない。
ショウマもタオリンも光の一筋すら見えない地獄から抜け出して幸果さんに出会って居場所を見つけ幸せになった。ならばどんな結末が待っていようとも幸せだった時間は嘘にはならない。
そんな風に思わせてくれるラストシーンは同時に本編のショウマもビターエンドを迎えるんじゃ…と少し不安になった。
やったね!新しいマッドサイエンティストだよ!

続いて今作のヴィランとなるミューター周りについて。
本編のストマック家が邪悪であると同時にどこか人間らしく魅力的で、そもそも主人公の身内という複雑な関係からただ断罪するだけで終わって良い敵ではないのに対しミューターは思い切って「くたばれ!」って言っていいタイプのとりつく島もない絶対悪。
ミューターのキング カリエスはいたずらに世界を蝕み全てを壊し、望むものを手にしようと躊躇いなくあらゆる命を犠牲にする悪の大王のようなキャラクターで演じる世界さんが貫禄たっぷりのこれを演じた。とにかく声が爆裂にいいね。
衣装も色々と分厚くて立っているだけで凄まじい存在感を発揮しそこから激渋重低音ボイスで喋った日にはもう悪の帝王のエポックイメージそのものみたいな完成度に達する。元々仮面ライダー好きらしいので多分特撮の演技にも造詣があるんだろうなって端端で感じた。
そもそも「カリエス」とははやい話が「虫歯」のことであり、カリエスの変身する仮面ライダーカリエスも虫歯の初期症状(C1)の歯のエナメル質が溶けて変色している様を表現したマスクになっている。お菓子の大敵である虫歯を映画のボスに持ってくるセンスがシンプルに好き。
このカリエス、終盤で更なるパワーアップを果たす事になる。その名も仮面ライダーカリエス C3。
C3とは虫歯が神経にまで達してしまい神経ごと除去しなければいけない重症の状態のことで今までは白かったカリエスも真っ黒のマスクに代わりいかにもダークライダーという感じのビジュアルに変貌。
ちなみにパンフレットで世界さんは「ダークライダーで強化形態まであるのは珍しいんじゃないですか?」と語っていた。
そのコメントで分かる。
あんたさてはだいぶ理解(わか)ってる人だな?
虫歯を全面に押し出したライダーのデザインは面白いし、悪の帝王としてこともなげに残虐な行いをする(特に中盤タオリンにした事の惨さは特筆)カリエスはちゃんと嫌いになれるいいヴィランだった。
ところで皆さんは『ガヴ』において欠かせない要素とはなんだと思う?
そうだね。マッドサイエンティストだね。
というわけで本作には酸賀、デンテ、ニエルブに続いて新しい4人目のマッドが登場しているのだ!
いやー2/3死んで寂しかったんだよねー。
カリエスに忠誠を誓うオッドアイのファンタスティックなマッド その名はクラープ。演じたのはやはりFANTASTICSの木村彗人さん。
個人的にカリエス以上に嫌いになれて好きになれる外道でお気に入りなのよねコイツ。
狂気混じりの恍惚とした喋り方やマッドらしい常軌を逸した研究に傾向する様、一方であまりに我儘なカリエスに振り回され気味な常識人らしい面を時折覗かせる感じもかなり魅力的。
自分の研究によって生み出したもの達に偏愛を向けながら「生まれた意味」を実行する際には一切の容赦はなくその行為に昂っているようなエキセントリックなタイプのマッドで本編3人の誰とも違う。ある意味で1番マッドらしいマッドがこのクラープかも知れない。
「わざわざ戻ってくるとは…なんと可愛い子なんでしょう」って台詞があるんだけど気持ち悪くて好きなんだよねこのシーン。
ショウマが珍しくマジギレするシーンもありそのきっかけになるのもクラープなんだけどマジギレをちゃんと引き立てるクソ野郎っぷりがお見事。木村さんは演じるに辺り振り切った演技を意識したらしいがそれがめちゃくちゃ当たったなって。
それとここで一緒に書いてしまうが本編同様アクションもちゃんとかっこいいのでそこも本作のおすすめできるポイント。
好きなとこはやはりラストバトルだな。
ガヴvsカリエスでお互いにレバーを回し出すから「あとはキック対決で終わりかな?」と思いきやそこから殴り合う。殴り合いが硬直するとまた互いにレバーを回しパワーを高めそこから更に殴り合う!って流れが熱いし劇場版らしくCGも凝っててかっこいい殺陣になっていた。
ファンタスティックなストマックファミリー

今作がまだどういう話になるのかすら決まっていなかった頃、撮ることが決まった段階で杉原監督はこう言ったそうだ。
「ランゴ〜ショウマまでのストマック6兄妹を全員同じ画角に収めたいな」
と
予告でも話題になったストマック家の味方化は制作サイドにとっても強い思いのあるシーンだったのだ。
最後にこのストマック家味方化について語りたいです。正直私もこのシーンがやっぱり1番好きな場面だからさ…
闇菓子のない世界でストマック家はみんな仲良し。ジープとシータは生きてるし2人で社内コンペを勝ち取ろうと人間のお菓子の研究をしながら直属の執事であるラキアをこき使っていて、グロッタもまたお菓子の研究をしているが何故か食べるものがどれもガッツリ飯ばかり(ちなみに運んできたのは絆斗)。
もうこの時点でニヤけるよね。どうしようもない奴だけどズタボロの本編ジープ知ってるとこっちで幸せそうで良かったってなる。
ちょっとズレるけど執事ラキアは女子人気やばそうと思いました。双子とのやり取りとか少ないんだけどかなりそそられた。
そんなジープとシータが中盤ミューターによって誘拐される事件が発生。それをラキアに報告されランゴは「ジープとシータが誘拐された?」と驚くんだがここが本編で散々聞いたいわゆる「何ィ構文」過ぎて口元が緩む。カメラワークとかも狙ってやってんじゃないかって気がするくらい既視感あるし。
直後ランゴはいつもの部屋が埋まるくらいの勢いでエージェントを大量に召喚し2人の捜索を開始する。兄妹のこと好きすぎるって…最高かよ。
そして終盤、無事救出されたジープとシータを連れて五兄妹全員でお礼参りと言わんばかりにミューターの元へやってくるんだが現場ではすでにショウマがズタボロにされ大ピンチに…
もはや限界と仰向けに倒れそうになったショウマの背を支える手。それはもちろんランゴだ。
このシーン、ランゴからすればショウマはミューター相手に頑張っていた誰かさんに過ぎないがショウマからすれば敵対することしか出来なかった兄が自分を支えてくれたという状況で『ガヴ』見てる人全員に刺さるシーンだと思う。
主演の知念さんもここは非常に印象的だったようで「兄さんの温もりを感じられるシーンが嬉しかった」と話している。
この後のランゴの台詞がまたたまらない
「ジープとシータを攫ったのはお前らか…生きて帰れるとは思わんことだな」
キャー!ランゴ兄さーん!長男の鑑ー!俺の仕入れ担当になってー!
並び立つストマック五兄妹がまるで(別世界の)末っ子を守るように横並びになりミューター達と激突するシーンは本編とは違う異世界という設定にしたからこその旨みがたっぷり出ている名シーン。
公開前はグロッタの丸太の印象強過ぎてそこばっか気になっていたが蓋開けてみると丸太がどうでも良くなる程ストマック関連は我々の見たかったものに仕上がっているのでまさに必見だ。
あ、ブーシュは出てきません。
幸せな世界に居場所がないのはショウマだけじゃなかったようだな。
まあ真面目に考えると出番ないだけで存命か、普通にお菓子屋さんの社長として死んでちゃんと子供達にも悲しんで貰えたとかなのかな
総評
というわけで『仮面ライダーガヴ お菓子の家の侵略者』でした。
本編から独立した物語で異世界が舞台だからこそ出来るギミックが各所に仕込まれており、そこに『ガヴ』らしいポップ&ダークを多分に含んだ結果TV版からパワーアップしたまさに劇場版規模の『ガヴ』そのものという感じで安定感は抜群。
本編で綿密に仕込んだ伏線を長く引っ張りながらも膨らませていき一気に爆発させた結果瞬間最大風速がとんでもなかった昨年に比べるとパワーは落ちるが一本の仮面ライダー映画としては十分なクオリティ。
もちろんゼッツも一足早く登場するのでみんなも劇場にイッテミロイッテミロ…
それではまた


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